きのさんのブログ

書きたいことを書きたいだけ

映画【さんかく窓の外側は夜】は配信まで待った方がいい

TSUTAYAをうろうろしていたら、実写化おすすめ漫画のコーナーにヤマシタトモコさんの漫画が置いてあった。ヤマシタトモコさんの漫画が、しかもリブレ(出版社の名前)の作品が、実写映画化される。嫌な予感がした。とりあえず原作漫画を読むことにした。ヤマシタトモコさんの漫画はしばらく手つかずだった。

 

libre-inc.co.jp

 

面白かった。TSUTAYAで借りて、次の日には既存の9巻まで大人買いした。この作品は肉感的で目で楽しむBLというより関係を楽しむブロマンスなバディものだった。

ブロマンス英語Bromance)とは、2人もしくはそれ以上の人数の男性同士の近しい関係のこと。性的な関わりはないものの、ホモソーシャルな親密さの一種とされる。

冷川理人(ひやかわりひと)は霊を退治することを生業にしている。 警察の未解決事件などにも力を貸す本物の除霊師。その生い立ちが影響してか、人間らしい考え方が少しだけ欠落している。三角康介(みかどこうすけ)は幼い頃から「霊を視る」能力に長けているため、冷川に見いだされ、助手になった。幼い頃から母と2人暮らし。能力は鬱々としているのに本人はいたって快活で、ポジティブで、生気にあふれている。

 

能力を補い合うふたりの性質や生い立ちはどこか重なり合い、決してでこぼこコンビではない。培われていく人間関係は肉欲的な愛情ではなく、親友としての愛情を育てていく。セクシーだなと思うのは、冷川が三角の能力を享有するために三角の身体に触れ、“中に入る”と、三角は射精したくなるくらい気持ちがいいという表現があること。言葉攻めとも受け取れる会話、息づかいが非常にセクシャル。セクシャルだけどいやらしくない。ヤマシタトモコさんの台詞はセンスの塊だ。簡潔な線とパキッとした画面構成と合わせて、おしゃれな漫画なのだ。

 

で、映画版。ちっともおしゃれじゃなかった。ちっともおしゃれじゃなかったし、とにかくつまらない時間がだらだらと流れた。何がいちばんつまらなかったのかというと、三角の性格がうじうじしていて、いかにもホラー映画の主人公って感じだったのが、いちばんつまらなかった。こんな“いかにも”なキャラクターが実写世界で動くのを見たくて1800円を払ったわけじゃないんだが。

 

対して、今回のラスボス“呪い屋”女子高生、非浦英莉可役の平手友梨奈は素晴らしかった。原作の非浦英莉可よりも常にシリアスで鬱々としているが、B級ホラーな呪いの演出のなかで彼女の演技だけがリアルで、切迫した状況を味わわせてくれた。『』の彼女も素晴らしかったし、彼女が出る作品は全部チェックすると決意した。

 

映画のシナリオは『貯金箱』についてのエピソードの上澄みと、冷川の過去についてのキメラ。“先生”については完全にギャグ。続編を臭わせるようなエンディングだったが、どうする気だ。大丈夫か。三角についてはねつ造7割、そうだね3割。とにかく性格が真逆すぎる。残念。役者さんは好きなのに。サスペンスでもホラーでもミステリでもない。『さんかく窓の外側は夜』は『さんかく窓の外側は夜』というジャンルなのだから、なにかのジャンルを求めてご覧になった皆様にはがっかりだろうし、原作ファンの皆様にもがっかりだろうし、誰のための映画だったのか。最大の謎だ。


movies.shochiku.co.jp

 

サブスクで見てちょうどいい作品だったな。

窮鼠はチーズの夢を見る」みたいにのんびり待てば良かった。

 

www.amazon.co.jp

 

f:id:crossboder:20210126144154j:plain

原作は最高なんだもの。期待しちゃったんだもの。